<< 一覧に戻る

特集 糖尿病と心合併症2017~循環器専門医との連携を図る

Ⅰ.糖尿病患者の心疾患リスクの特性を理解する ①糖尿病と心不全の連関

―その病態と治療―

和田厚幸柏木厚典

Diabetes Frontier Vol.28 No.5, 503-508, 2017

国際糖尿病連合(IDF)の2015年Atlas報告によれば全世界での糖尿病患者数は,実に4億1,500万人に上り,そのうち日本人の罹患者数は世界第9位の720万人に及ぶ。糖尿病と循環器疾患の関連は何かと問えば,まず冠動脈疾患の合併症が挙げられる。UKPDS(United Kingdom Prospective Diabetes Study)35試験による2型糖尿病患者のHbA1c別細小血管障害と心筋梗塞(myocardial infarction:MI)の発生率の比較では,細小血管障害はHbA1c値>8.5%で発生率が増加するに対して,MIはHbA1c値が6%前後の管理良好あるいは投薬管理を必要としない状態から10%/年以上の頻度で発生し,その発症予防が難しいことが確認されている1)。しかし生活習慣の改善,糖尿病治療薬の進歩に伴い1990~2010年の20年間の米国での糖尿病患者のMI,脳卒中,高血糖死,末期腎不全,下肢切断の5大臨床像の転帰を調べた研究によるとMI死は実に68%の低下,脳梗塞でも53%の低下で,その低下率は非糖尿病患者よりも有意に低下していた2)。MI死が低下した分,心筋障害を有した患者が生存して心不全(heart failure:HF)の転帰をたどるようになる。今回糖尿病とHFとの関連について検討してみる。
「KEY WORDS」糖尿病/心不全/糖尿病性心筋症/病期分類

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る