65歳以上を高齢者人口とした場合の高齢化率は26.7%と日本が世界一であり(平成28年版高齢社会白書),高齢者人口は過去最高の3,392万人である。「日本白内障学会ガイドライン」による日本白内障疫学研究班分類で程度2以上の水晶体混濁の有所見率は,70歳代で60%であることから,昨年は白内障手術件数も年間140万件が施行されている。
一方糖尿病に関しても,近年の糖尿病患者数とその予備群の急増が著しく,「糖尿病は21世紀の国民病」と認識されつつある。実際1997年の糖尿病とその予備群を合わせた推定糖尿病患者数は1,370万人であったが,10年後には2,210万人と60%の増加であった。糖尿病網膜症(diabetic retinopathy:DR)は糖尿病患者の6人に1人(15%)に合併し,久山町研究(2007年)によればHbA1cが7%以上,糖尿病罹病期間が10年以上だとDRの発症リスクが高まるという。糖尿病黄斑浮腫(diabetic macular edema:DME)はDRの病期が進行に従い,単純期であれば5%程度であるのに対し増殖期に進行すると70%と高率になる。DRが進行するとDMEも合併しやすく,単純期でもDMEが起こる。つまり,急増する糖尿病患者における白内障手術の周術期管理に関して,DRはもちろんDMEに対しての治療戦略を,眼科医であれば会得しておかなければならない時代に突入したといえるだろう。
「KEY WORDS」糖尿病網膜症,糖尿病黄斑浮腫,白内障手術,血糖コントロール,レーザー治療,薬物治療