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特集 糖尿病網膜症

糖尿病網膜症の病態研究と進歩

神田敦宏石田晋

Diabetes Frontier Vol.28 No.3, 273-276, 2017

近年,超高齢社会を迎えたわが国では,眼をはじめとする感覚器や循環器臓器の健康を維持することは,quality of lifeの向上に直結する重要課題となっている。しかしながら,われわれを取り巻く環境は大きく変わり,加齢を含めたさまざまな危険因子が生活習慣病の罹患者数の増加・進行を助長している。その結果,糖尿病のみならず高血圧・動脈硬化などを合併し,さらには重症度の高い心腎障害(糖尿病腎症)に陥る。眼科領域では網膜疾患(糖尿病網膜症や加齢黄斑変性など)が失明などの臓器機能低下・損失の上位を占めている。これら網膜疾患や心腎障害は終末病態として炎症・血管新生・線維化をきたし,生活習慣病に合併した血管症と位置づけられる。眼科領域ではすでに,血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)阻害薬が臨床応用されている。しかし,終末病態で介入する抗VEGF療法には神経網膜の不可逆的変性による限界も認められ,より良い視野機能予後を得るためにさらに上流の経路に早期介入(慢性化前に)する戦略の確立は急務である。
「KEY WORDS」レニン・アンジオテンシン系,受容体結合プロレニン系,(プロ)レニン受容体,血管新生,炎症

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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