2型糖尿病の病態は,インスリン分泌不全とインスリン抵抗性の2つで特徴づけられる。インスリン分泌不全の原因としては,個々の膵β細胞のインスリン分泌能の障害のみならず,膵β細胞量の減少も大きな要素であることが明らかになってきている。膵β細胞量の減少の機序として,小胞体ストレスによる膵β細胞のアポトーシスが非常に重要であることが以前より指摘されていた。さらに,小胞体ストレスはインスリン標的組織のインスリン抵抗性とも密接に関係していることも報告されている。2型糖尿病の病態において,小胞体ストレスを軽減することは,膵β細胞保護に働くだけでなく,インスリン抵抗性の改善にもつながる可能性がある。本稿では,2型糖尿病の病態から治療における小胞体ストレスの役割について概説する。
「key words」2型糖尿病,小胞体ストレス,膵β細胞,インスリン抵抗性