糖尿病多発神経障害(diabetic polyneuropathy:DPN)は,糖尿病罹病期間がリスク因子の1つであることより,高年齢層において,その有病率が増加する。英国における統計では,20歳代では5.0%の有病率であるのに対し,70歳代では44.2%にまで増加することが報告されている。
しかしながら,高齢者においてDPNがもたらす影響は,十分認識されているとはいえない。DPNにおける運動神経系の障害が筋力低下,サルコペニアならびにその延長線上にあるフレイルの原因となる。また,運動神経障害に加えて感覚神経障害も併存することにより,歩行の安定性が損なわれ,歩行障害,転倒,さらには骨折を誘引する。これらの感覚運動神経障害とは別に,自律神経障害が消化器症状・無自覚低血糖などを惹起し,QOLを低下させ,生命予後を悪化させる。
「key words」糖尿病神経障害,加齢性末梢神経障害,無自覚低血糖,サルコペニア,フレイル