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小特集 心血管イベント抑制に対する新規糖尿病治療薬の最新知見

小特集にあたって

柏木厚典

Diabetes Frontier Vol.27 No.6, 767, 2016

糖尿病患者の細小血管症の発症・進展の予防には血糖の厳格な管理が最も重要であることは,1993年DCCT,1995年Kumamoto study,1998年UKPDSをはじめとして多くの臨床研究により確立されている。しかし糖尿病患者の心血管疾患の予防に関しては,厳格な血糖管理による効果の発現には,約10年以上の長期間を要し,また良好な血糖管理による心血管疾患の発症には,legacy effectがあるが,血糖正常化を目指しても短期間での有意な心血管病の発症を抑制することができなかった。逆に,ADVANCE試験では厳格な血糖管理に基づく低血糖,肥満誘導の問題から,心血管死が有意に増加すると報告された。現在薬物による心血管病発症の予防効果は,メトホルミンとピオグリタゾンで報告されているが,2型糖尿病患者のインスリンまたはSU薬治療では,血糖管理以外の薬剤特異的な心血管病発症抑制効果は期待できないとされている。一方,米国FDAは2007年に報告されたチアゾリジン誘導体のロシグリタゾン治療により,心血管系リスクを増大させる可能性が報告された後,新しい糖尿病治療薬の承認には少なくともプラセボ群に比べて心血管リスクの上昇がないこと(非劣勢)を証明することが必要となった。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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