「はじめに」肥満外科治療は,内科治療では減量が困難な高度肥満症患者に対する強力な減量治療法として欧米を中心に広がった。現在,世界中で年間約34万件の手術が行われている1)。日本では,これまであまり浸透しなかったが,腹腔鏡下スリーブ状胃切除術(laparoscopic sleeve gastrectomy:LSG)が,2014年4月に保険収載され,施行数が増加しつつある。最近では,年間200例程度施行されている。肥満外科治療は,確実な減量が得られるだけでなく,併存する肥満合併症を改善することによって生命予後を改善することが報告されている2)。なかでも糖尿病を劇的に改善させることが注目されている2)3)。その機序については,さまざまな仮説が提唱されているが,いまだ,結論は得られていない。従来からインクレチンの関与が示唆されているが,それを否定する報告もある。最近では,インクレチンによらないさまざまな新しい機序が報告され,研究は広がりをみせている。本稿では,肥満外科治療による糖代謝改善機序について,これまでの有力な説を概説する。
「key words」インクレチン,腸内細菌,胆汁酸,耐糖能改善