「はじめに」骨格筋は加齢による変化が顕著な臓器である。加齢に伴い,骨格筋量は減少し,40~79歳までの40年間に男性で10.8%,女性で6.4%の骨格筋が失われるとされている1)2)。骨格筋量の減少とそれに伴う筋力の低下は移動能力の低下をきたし,日常生活動作(ADL)の低下や転倒,骨折のリスクとなる。2015年には65歳以上の高齢者が総人口の26.7%を占める超高齢社会となったわが国では,高齢者の自立は重大な社会問題となっており,加齢による骨格筋量の減少・筋力低下(サルコペニア)が注目されるようになってきている。
「Ⅰ.サルコペニアの定義と診断基準」サルコペニアは,1988年にRosenbergによって提唱された概念である3)。ギリシャ語で筋肉を表すsarxと,喪失を表すpeniaを組み合わせた造語で,加齢による筋肉量の減少に着目した概念であった。しかし,その後20年あまりにわたって,明確な定義はなされず,診断基準も定められていなかった。この間に筋肉量の減少だけでなく,筋力や身体機能の低下が生命予後に関わることが指摘されるようになり,2010年,European Working Group on Sarcopenia in Older People(EWGSOP)によるコンセンサスレポートが発表された4)。
「key words」サルコペニア,Akt/mTOR経路,Akt/FoxO経路,Myostatin,レジスタンストレーニング