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特集 アディポサイエンス・フロンティア

特集にあたって

小川佳宏

Diabetes Frontier Vol.27 No.3, 281, 2016

「アディポサイエンス」はわが国発の造語であり,文字通り「脂肪の科学」を意味する。従来,脂肪組織は単なるエネルギー貯蔵器官であり,美容上の観点で議論されるだけだった。臨床家にとって体脂肪の過剰状態である「肥満」あるいはその対極の「やせ」は余り興味深い病態ではなく,研究者にとっても脂肪細胞はどちらかというと退屈な細胞であったと思われる。脂肪組織がにわかに注目を集めたのは,1994年末にNature誌に発表された脂肪組織由来ホルモンであるレプチンの発見であろう。数年遅れてわが国で発見されたアディポネクチンとともに,脂肪組織が多くのアディポサイトカインを分泌する内分泌器官であるという概念が確立された。そしてレプチンの発見を契機として,中枢性食欲調節機構の詳細が徐々に明らかにされてきた。一方,脂肪細胞の分化のマスター転写因子としてPPARγが同定された。最近では,余剰エネルギーを貯蔵する白色脂肪細胞と熱産生に関与する褐色脂肪細胞の中間的な細胞としてベージュ細胞が同定され,抗肥満症創薬の標的細胞として注目されている。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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