「はじめに」多岐に渡るインスリン作用を考える上で,Aktは中心的な役割を果たすキナーゼである。その発現や機能について,本稿では概説していきたい。
「Ⅰ.Aktの構造とアイソフォーム」AktはプロテインキナーゼB(protein kinase B:PKB)とも呼ばれる分子量約60kDaのセリン・スレオニンキナーゼであり,哺乳類においてAkt1,2,3(PKBα,PKBβ,PKBγ)の3つのアイソフォームが知られている。このうち,Akt1,2はユビキタスに発現しており,特にAkt2はインスリン標的組織に多く発現している。一方でAkt3は神経系や生殖系に限局して発現すると考えられている。主要なアイソフォームであるAkt1,2のうち,Akt1は主に細胞増殖,Akt2は代謝を調節する。
「Key Words」インスリンシグナル,細胞増殖,代謝,キナーゼ