「Ⅰ.医学と医療学」医学の基本は科学の方法に則ることである。それは「論理性」,「普遍性」,「客観性」という概念で表現される。ここに「法則性」を加えることもできる。糖尿病治療に関するエビデンスを考えればそれが理解できる。たとえば,細小血管合併症防止のための基準HbA1c 7.0%未満は,欧米人でも日本人でも証明されており,普遍的で客観的である。一方で,例外のない法則はないという言葉があるが,そのような基準が当てはまらない症例がいることも事実である。また,多数のデータを統計学的に処理した結果が必ずしもひとり一人の患者さんの最適な治療方針を語ることはないともいわれるようになった。ひとり一人というレベルで考えると,患者さんの判断は,必ずしも論理的ではないし,必ずしも客観的ではない。また普遍的でもない。論理よりも直観あるいは感情が先行することが多い。その人特有の考え方がある場合も多い。
「key words」糖尿病医療学,老年期,心理的危機,ライフサイクル