特集 高血圧と臓器障害
高血圧と糖尿病性腎症
Diabetes Frontier Vol.26 No.2, 187-193, 2015
「はじめに」糖尿病治療の目的は,糖尿病の慢性合併症を予防し,健常者と比べて遜色のないQOLを生涯にわたって維持することにある1)。糖尿病性腎症の発症に対して最も重要なものは高血糖であることはいうまでもない。高血圧は,高血糖と同様腎症の発症に影響し,発症後の腎症進展の点で,高血糖よりも重要と考えられる。糖尿病患者では,高血圧を合併することが多いことは古くから知られており,腎症の進行に伴い,その頻度はさらに増加する。本稿では,腎症の発症および進展予防を目的とした降圧治療の実際について,私見を述べたい。
「Ⅰ.腎症発症予防における降圧療法の意義」1 糖尿病患者における降圧目標に関する再考
上に述べたように,糖尿病性腎症の発症予防において,血糖値を良好に維持することが最も重要であることは,多くのエビデンスで明らかにされている。しかし最近までのさまざまな糖尿病治療の進歩にも関わらず,いまだ多くの糖尿病患者で,良好な血糖コントロールを長期にわたって維持することは容易でない。
「key words」糖尿病性腎症,降圧目標,ACE阻害薬,ARB,利尿薬,カルシウム拮抗薬
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