特集 糖尿病強化療法―低血糖を巡る諸問題
Ⅱ.低血糖と慢性合併症 HbA1c急速低下による網膜症の増悪とその対策
Diabetes Frontier Vol.25 No.4, 439-443, 2014
[はじめに] 網膜症の進行を抑制するために, コントロールを良好に保つことが重要とされているが, コントロール不良例に対して治療を開始した時に網膜症が稀に悪化しても, そのままの治療の継続にて網膜症が改善する1)2)場合と, 網膜症の進行がきわめて早くまたは重篤であるために何らかの対応が必要になる3)4)場合がある. HbA1c急速低下でどのような病変が出現するのか, どのような場合に重篤化するのか, 対策について述べる.
[I. 眼底所見: 悪化の病態] インスリン治療だけでなく経口血糖降下薬や食事療法後でもHbA1cが急速に低下したとき, 稀に軟性白斑や線状出血や網膜浮腫が出現する4)-8). 軟性白斑は必ずしも前増殖糖尿病網膜症の所見ではなく, 軟性白斑は初期の網膜症にも出現し, 頸動脈肥厚を認めることが多い9). 軟性白斑は頸動脈肥厚部から遊離した微小栓子により発生しやすく, 細小血管症である糖尿病網膜症は大血管症の影響を受けていることを示しているので, 軟性白斑を認めたなら頸動脈エコーにて病変の有無を検討したほうがよい.
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。