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特集 糖尿病と精神疾患

糖尿病と摂食障害

塚原佐知栄

Diabetes Frontier Vol.25 No.3, 312-317, 2014

「はじめに」摂食行動とは, 動物に生まれつき備わる原始的行動である1). 「食」へのモチベーションは「生きる」ために必須なものである1). しかし, 摂食障害患者は「食欲」という動物の最も根源的な欲求を, 自らの意志で抑え込み, 「スリムな体型を得る」という別の「報酬」で上書きをしている1). 他の動物モデルによって摂食制限に続発する過食行動などは説明できるが, 当然, 身体像の歪みや自己誘発嘔吐といった人間の本当の摂食障害の病理や行動は再現することはできない2). 摂食障害は, 視床下部からの信号を無視した(食行動を作り出す)大脳基底核のシステムの暴走ともいわれる1). 大脳皮質など上位中枢神経系の関与が重要と考えられており, 薬は病気の大きさに適うほどのものにはならず, その病理解明と治療には, 罹患者同様に, 高度に脳が進化した「人間」が必要不可欠な存在である. 人間故に罹患し, 人間故に治療の模索ができる. そのような疾患である.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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