「はじめに」2型糖尿病の病態には, インスリン分泌不全とインスリン抵抗性の両者が関与している. 近年増加している糖尿病患者は, 高脂肪食や運動不足といった生活習慣によってインスリン抵抗性が惹起され, インスリン分泌が抵抗性に対して十分に代償できなくなって発症していると考えられる. インスリン分泌不全に対してスルホニル尿素(SU)薬やグリニド薬, インクレチン関連薬が, インスリン抵抗性に対してメトホルミンとチアゾリジン薬(thiazolidinedion:TZD)がある. 本稿ではTZDについて概説し, 特にその脂質代謝改善作用について述べる. 「I. TZDの作用機序」TZDは, 骨格筋における糖取り込みの増加, 肝臓における糖新生の抑制など, インスリン標的臓器においてインスリン作用を増強することにより全身のインスリン抵抗性を改善する1). TZDは, 核内受容体型の転写因子peroxisome proliferators activated receptor(PPAR)γのリガンドであり, 強力なアゴニストとして働く.
「key words」PPARγ,アディポネクチン,ピオグリタゾン,中性脂肪,HDLコレステロール