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特集 糖尿病と脂質代謝異常の病態リンク

特集にあたって

武田純

Diabetes Frontier Vol.24 No.4, 385, 2013

糖尿病の早期診断や治療の主たる目的は, 合併症の発症や進行の防止にある. 細小血管症は糖尿病に比較的特徴的であり, 慢性高血糖に関連して一般に10年以上の罹病歴がある. 一方, 大血管障害は, 耐糖能異常が比較的軽度である段階から発症し, 肥満, 動脈硬化, 脂質異常などの生活習慣に関連した代謝異常を伴う. すなわち, 糖尿病の罹患体質の単独プレイではなく, 独立した脂質代謝異常に関する体質や生活因子の協調が欠かせない. 糖尿病でみられる脂質異常には特異的な病態はないが, 糖尿病では一般に中性脂肪の高値を認めることが多く, 特に肥満の合併例ではインスリン抵抗性の関与は少なくない. 肝臓のみならず, 脂肪や筋組織などのインスリン感受性の多様性は脂質の代謝と流れを複雑にしている. 内蔵脂肪では, 放出された遊離脂肪酸は膵β細胞のインスリン分泌能を減弱するが, 高LDL自体もβ細胞のアポトーシスに寄与する可能性が示唆されている. 糖毒性と並んで脂肪毒性は耐糖能異常の重要リスクとされるので, 脂質異常の直接治療薬であるスタチンやフィブラート製剤は合併症の予防のみならず, 耐糖能改善への影響も期待される. 最近, 糖尿病治療薬のラインナップは特に経口薬において充実された. その結果, 各種の糖尿病薬からの脂質代謝への効果も期待されるようになった. まず, チアゾリジンはインスリン抵抗性の改善薬であることから, 末梢の脂肪組織の代謝や心血管イベントへの効果は幅広く解析されてきた. もう1つのインスリン抵抗性改善薬であるビグアナイドは, 脂肪肝の改善作用を有するが, 最近では胆汁酸の腸肝循環に関与してインクレチン分泌促進作用が示唆されている. PPARαを介した膵β細胞のインクレチン受容体の発現増強も示唆されている. また, DPP-4阻害薬は開発手法の異なりから化学構造は多様であり, インクレチン作用以外に脂質改善の膵外作用を有する薬剤も登場した. DPP-4の対象基質の1つであるGIPは脂肪蓄積にも関与することが示されている. このように, 糖尿病と脂質代謝異常は相互に密接に関連しており, 最近の研究から複雑な病態リンクは次第に明らかになりつつある. そろそろ, われわれの従来の理解度もアップデートする時期に来たのではないかと考える.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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