特集 インクレチン関連薬の多面的作用の理解に向けて
インクレチン,DPP-4阻害薬の腎保護作用
Diabetes Frontier Vol.24 No.3, 315-319, 2013
「はじめに」インクレチン製剤の登場は, ここ数年の糖尿病診療における大きな変革の1つであろう. 食後に小腸より分泌される消化管ホルモン(インクレチン)の1つであるGLP-1(glucagon-like peptide-1)は, 膵β細胞からのインスリン分泌の増幅をもたらすホルモンであり, その作用増強が糖尿病治療標的となりえると期待されてきた. しかし, GLP-1は分泌直後より生体内に存在する分解酵素(dipeptidyl peptidase-4:DPP-4)によって速やかに分解されるため, 血中半減期がきわめて短い. そこで, 血中GLP-1濃度を上昇させることを目的としたインクレチン関連薬として, DPP-4阻害薬あるいはGLP-1アナログが開発されるに至った. スルホニルウレア(SU)薬に代表される既存のインスリン分泌促進薬との大きな違いは, インクレチン製剤が血中糖濃度依存的にインスリン分泌増強作用を示す点にあり, 低血糖という糖尿病診療における問題の1つが大きく改善された.
「key words」腎,近位尿細管細胞,糸球体,糖尿病性腎症,GLP-1
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。