特集 インクレチン関連薬の多面的作用の理解に向けて
インクレチン,DPP-4阻害薬の心筋保護作用
Diabetes Frontier Vol.24 No.3, 281-285, 2013
「はじめに」糖尿病の合併は, 心不全発症あるいは心血管死亡リスクをおよそ2~3倍に上昇すること, 逆に冠動脈疾患患者では, 約6割に耐糖能異常を含む糖尿病状態が併存し, 心不全患者でも, 一般検診患者と比較し約2倍の糖尿病有病率を呈することが知られており, 筆者らのグループも糖尿病の合併が心不全患者の予後を有意に悪化させることを報告している(図1)1). このように, 心血管病の一次予防(=発症予防)および二次予防(=再発予防)において, 糖尿病を可能な限り治療することの重要性は周知されているが, 心血管疾患を合併する糖尿病患者に対する治療薬選択のガイドラインはいまだ確立されていない. また, 糖尿病治療の心血管系保護作用として, 血糖降下作用は最も主要な作用機序であるが, 糖尿病治療薬のなかには, 本来の糖尿病治療とは独立して, 心血管系にも作用する可能性, すなわち多面的作用が示唆されている薬剤が報告されてきた.
「key words」インクレチン,心不全,糖尿病
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