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特集 食事療法を見直す

特集にあたって

菅原正弘

Diabetes Frontier Vol.24 No.1, 25, 2013

食事療法は糖尿病治療の要で, いかに良い薬物が世に出ても, これなしに糖尿病を良い状態に保つことはできない. 食事療法は単に血糖コントロールだけの問題ではない. 糖尿病治療の目標が生涯充実した人生を全うするということにあるように, 生涯にわたり良好なQOLを保つための食事でなければならない. 動脈硬化や癌, 寝たきりの三大原因である脳卒中, 認知症, 骨折を防ぐための食事という考えも必要だ. 三大栄養素のエネルギー比率は脂質25%以内, たんぱく質15~20%, 糖質50~60%というのが, 現在の標準的な考え方だと思う. この比率に関して, 医学的にエビデンスがあるのかと問われて, 即座に答えられる医師, 管理栄養士は少ないのではなかろうか. 糖質の比率が高いが, 米を主食とする日本人の食習慣を考えると, 違和感なく受け入れられてきたと思う. 実際, 従来の食品交換表を用いた指導で, 大半の患者は上手くいっている. しかし, 血糖値が変動する患者がいるのも事実で, このようなケースでは, 糖質の摂取量を一定にするよう指示すると, コントロールが劇的に良くなることもしばしば経験する. 基礎カーボカウントは食事の糖質量を一定にする方法で, それを実践するには, 個々の食品に含まれる糖質量を知る必要がある. 応用カーボカウントは摂取した糖質量に応じてインスリン量を調節する方法である. より充実した食生活を送れそうに思えるが, 体重が増えやすいという欠点もある. 患者自身が自制して食事を摂れることが実施条件となろう. 近年, 糖質(炭水化物)制限により血糖コントロールが改善するという報告もあり, 糖質制限食が注目されている. 賛否両論あるが, 本特集では, おのおのの立場から論じていただいた. 読者自身でご判断いただきたい. 大半の糖尿病患者は, 管理栄養士のいない実地医家が診ており, 限られた診療時間の中で, 効率良く栄養指導を実践する方法を医師自身が身につけておく必要がある. 食事療法の基本を知った上で, 患者の生活パターンや食習慣を考慮し, それに応じた指導をしていくことが重要だ. 食事療法を成功に導くためのコーチングの手法, 独居の男性でも容易に作れる糖尿病食など, この特集には最新の食事療法の理論と実践法がとてもわかりやすく解説されている. 糖尿病の食事療法に興味をもっているすべての医療従事者に役立つ, とても充実した内容になったと思う. 御執筆いただいた方々に, 心から御礼申し上げたい.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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