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特集 糖尿病と妊娠における新たな展開

網膜症を合併した妊婦の過去・現在・未来

北野滋彦

Diabetes Frontier Vol.23 No.4, 434-437, 2012

「I. 糖尿病合併妊娠と糖尿病網膜症」糖代謝異常妊娠のうち, 糖尿病網膜症(以下, 網膜症)の管理のうえで問題となるのは糖尿病合併妊娠である. 糖尿病合併妊娠では, 母体高血糖により母児に種々の合併症が起こる. 母体では, 糖尿病性腎症と網膜症の悪化がしばしば認められる. 一方, 網膜症の悪化因子として, 糖尿病罹病期間, 高血糖, 高血圧などあるが, 妊娠も悪化因子の1つとされている. 網膜症の悪化の成因として, 血中ホルモンの変化, エストロゲンやプロゲステロンなどの胎盤ホルモンの増加, インスリン様成長因子が増加, 血糖コントロールの変化, 血液凝固能の亢進などがあげられる. 最近は計画妊娠および糖尿病合併妊娠の管理の向上により, 網膜症の悪化も軽減している. 一方で, 妊娠中の血糖の厳格な管理のために, 網膜症が一過性に悪化するケースがみられる. 通常の網膜症においてもしばしば遭遇するearly worsening, すなわち, 厳格な血糖コントロールによる一過性の網膜症の増悪が, 糖尿病合併妊娠においても認められている.
「key words」糖尿病網膜症,妊娠,網膜光凝固,硝子体手術

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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