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特集 糖尿病と妊娠における新たな展開

特集にあたって

佐中眞由実

Diabetes Frontier Vol.23 No.4, 399, 2012

糖尿病と妊娠に関しては, 先達の努力により臨床的研究, 基礎的研究に関して多くの業績が積み重ねられ, 多くの進歩が認められた. 計画妊娠や厳格な血糖コントロールの重要性が明らかになり, 技術面でも血糖自己測定やインスリン療法の進歩に支えられ, 妊婦と医療従事者との二人三脚により, 種々の工夫を重ねることにより, より良い周産期結果を得ることができるようになった. 近年, このような進歩をもとに新たな展開が基礎的研究, 臨床研究であった. 臨床研究で特記すべきことはHAPO(Hyperglycemia and Adverse Pregnancy Outcome)studyである. この結果をもとに妊娠糖尿病の診断基準が世界的に統一され, IADPSG(International Association of the Diabetes and Pregnancy Study Groups)からRecommendationとして報告され, 同じ診断基準で妊娠糖尿病についてさらに種々検討することができるようになった. 妊娠糖尿病の定義も変更され, 長年問題になっていた妊娠前から存在していたと考えられる糖尿病が「妊娠時に診断された明らかな糖尿病」として妊娠糖尿病から除外され, 妊娠時の糖代謝異常の分類も変更された. 基礎的研究では妊娠時の膵β細胞機能に関する素晴らしい研究結果がわが国から報告され, 妊娠時の研究から始まったこの研究は, さらに2型糖尿病の治療への応用へとさらなる発展が期待されているという. 治療面では, CSII(continuous subcutaneous insulin infusion)やCGM(continuous glucose monitoring)を用いた報告が積み重ねられ, より良い血糖コントロールを達成すべく, その有用な使用法についてさらなる検討が進められている. またすでに非妊娠時に使用されているインスリンの妊娠時の使用に関しても報告が相次いでいる. 健常妊婦における血糖値やコントロール指標となるHbA1cやグリコアルブミンの変動も日本糖尿病・妊娠学会から報告され, CGMを用いた結果をも参考にし, 健常妊婦の血糖値に近づける工夫がさらに必要となっている. 一方, 糖尿病網膜症や腎症を合併している妊婦に対する治療, 対応も, これらの分野の進歩を背景に新しい一歩を踏み出しているように思う. 妊娠可能年齢において合併率が高い甲状腺疾患への対応も忘れてはならない. 子宮内環境が児の将来に影響することは多く報告されているが, 児の一生を左右する妊娠時の治療に対する医療従事者の真摯な姿勢が重要と考える. この特集が, 糖代謝異常がありながら妊娠という女性にとって一大事業である時期に関与される皆様にとって有用であることを願ってやまない.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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