特集 私が経験した大震災からみた糖尿病対策への提言
東日本大震災の経験から Ⅳ 宮城県の経験から(3)東日本大震災が糖尿病コントロールに及ぼした影響―災害への最大の備えは厳格な血糖コントロール―
Diabetes Frontier Vol.23 No.2, 170-173, 2012
「はじめに」 東日本大震災の特徴の1つは, 被害地域の広大さとともに, ライフラインの復旧までの期間が長期にわたったことである. 当院は, 病院自体の被害は軽微であったが, 壊滅的な津波被害のあった東松島市に隣接しており, 10数名の糖尿病外来管理患者が津波の犠牲になった. また一方で, 多くの糖尿病患者が避難生活を余儀なくされ, あるいは, 比較的長期間, 食料品の供給が不十分な状態や交通機関が不正常なもとで生活した. 血管合併症の発症進展を防止することを目的とした糖尿病治療において, HbA1cを指標とした血糖コントロールの成否が, 細小血管症のみならず1), 大血管症においても発症・進展に密接に影響することが明らかになっているが2), 震災に伴う種々の困難な生活が糖尿病コントロールにどのような影響を及ぼしたかについて, 今回検討したので報告する. 併せて, 災害時に困らない適切な糖尿病薬物療法について, 当院で経験した症例をもとに考察した.
「key words」災害医療,血糖コントロール,HbA1c,低血糖,スルホニル尿素(SU)薬
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。