特集 私が経験した大震災からみた糖尿病対策への提言
東日本大震災の経験から Ⅲ 岩手県の経験から(1)津波災害を経験して―開業糖尿病専門医の立場から―
Diabetes Frontier Vol.23 No.2, 141-145, 2012
「はじめに」 私は2009年7月まで, 宮古市長を3期12年務めた. 現在は盛岡大学栄養科学部の教員を務める傍ら, 1987年に宮古市に開業した診療所の理事長として診療を行ってきた. 3月11日の津波災害を経験して前市長, 管理栄養士養成大学教員, 開業糖尿病専門医として感じたことを述べたい. 「I. 岩手県で最大の建物被害を受けた宮古市」 3月11日の東日本大震災では, 私の住む宮古市も甚大な被害を被った. 判明している宮古市の死者・行方不明者数は538人に上る. 被災戸数は岩手県で最大の6,934戸(うち全壊3,669戸, 半壊1,006戸)に及び, 瓦礫量も同じく岩手県で最大の116万2千トンとなった. 市長時代には世界一の津波防災都市を自認し, 2007年3月3日には昭和三陸大津波が襲ったこの日にちなんで, 全国に先駆けて「津波防災都市」を宣言して津波に強いまちづくりに努めてきたが, 津波は高さ10mの防潮堤(田老地区)を乗り越えて襲い街が一瞬にして破壊されてしまった(図1).
「key words」医師不足,糖尿病連携手帳,アナログ情報,管理栄養士,心のケア
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。