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特集 私が経験した大震災からみた糖尿病対策への提言

特集にあたって

佐藤譲

Diabetes Frontier Vol.23 No.2, 121, 2012

地震大国の日本では, 1923年の関東大震災以降, 1995年の阪神・淡路大震災, 2004年の新潟県中越地震, 2011年の東日本大震災と, この88年間に4回の大震災に見舞われた. 2011年3月11日に発生した東日本大震災では岩手県, 宮城県, 福島県を中心に大地震に加えて大津波が未曾有の甚大な被害をもたらした. 福島県においては津波に加えて原子力発電所の事故による放射線被害が加わり, 複雑で困難な様相を呈している. 2011年12月末の東日本大震災復興対策本部の報告によると, 死者は約15,800人, 行方不明者は約3,400人, 避難者は約337,800人, 被災3県の避難者は約263,300人である. 日本の糖尿病有病率を約8%とすると, 被災3県の避難者の中の糖尿病患者は約21,000人であり, このうち約半数の約10,000人が通院中の患者と推測される. 平時には安定していた慢性疾患の糖尿病が災害時には急性疾患に豹変し, 災害弱者である糖尿病患者の生命を脅かす. 震災後の大混乱の中で糖尿病患者のみならず, 医療者も百人百様の苦難を経験され, 対応に苦慮された. 本特集においては, 糖尿病医療の観点に絞って, 阪神・淡路大震災と新潟県中越地震時の教訓に加え, 東日本大震災については被災3県の医師, 看護師, 薬剤師, 栄養士の先生方に, それぞれの立場から貴重なご経験とそれに基づく災害への備えと対応についてのご提言をいただいた. また, 糖尿病患者や医療者への総合的な支援活動を実施された日本糖尿病学会および日本糖尿病協会からも活動状況をご報告いただいた. 本特集で示された論文の内容が, 遠くなく必ずやってくる次の災害時の糖尿病医療への備えと対策の上でお役に立てるものと思う.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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