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糖尿病と救急医療

心筋梗塞の急性期治療と血糖管理

坪井秀太代田浩之

Diabetes Frontier Vol.22 No.6, 634-638, 2011

はじめに
 日本における糖尿病患者数は約半世紀の間に約30倍に爆発的増加を認め,現在もなお増加の一途を辿っている。糖尿病は冠動脈疾患発症に関与する重要な危険因子であり,その予防の重要性に疑いの余地はない。しかし,近年,糖尿病の前段階である耐糖能異常,食後高血糖も冠動脈疾患の危険因子であることが明らかとなり,さらに早期における診断・治療介入の必要性が重要となってきている。
 急性心筋梗塞の多くは糖尿病をはじめとする生活習慣病が原因となり発症する。急性期血行再建術によりその予後は改善したが,糖尿病合併心筋梗塞患者の死亡率が依然として高いことが問題となっている。そこで本稿では急性期高血糖が心筋梗塞患者に及ぼす影響,急性期血糖管理の予後改善効果に注目して解説する。

key words
高血糖/インスリン治療/急性心筋梗塞/DIGAMI試験

Ⅰ.冠動脈疾患と糖尿病

 Framingham study,久山町研究により糖尿病患者は非糖尿病患者と比較し,2~4倍も冠動脈疾患の発症率が高いことが明らかとなり,冠動脈疾患における重要な危険因子であることが証明された。糖尿病患者の予後を非糖尿病患者と比較したFinnish試験1)では,糖尿病患者(1,059例)と非糖尿病患者(1,373例)について心筋梗塞の既往の有無で4群に分け,死亡をエンドポイントに約18年間追跡した。糖尿病患者と心筋梗塞の既往のある非糖尿病患者の死亡率はほぼ同等であった。これは,糖尿病患者と心筋梗塞の既往をもつ非糖尿病患者が同等の死亡率であることを示し,糖尿病患者の予後が不良であることを立証した非常に価値の高い研究である。また冠動脈形成術(PCI)後における糖尿病の影響を検討したわれわれのデータではPCI患者(748例)を12年追跡し糖尿病は非糖尿病と比較し2倍死亡率が高いことを示した2)。このように,糖尿病は冠動脈疾患発症の危険因子である上に,冠動脈疾患発症後の予後不良因子でもあるため,より早期からの診断,治療が重要である。

Ⅱ.急性心筋梗塞と高血糖

 冠動脈疾患の中でも特にハイリスク集団である急性心筋梗塞患者においても糖尿病は予後不良因子であり,急性心筋梗塞患者の予後と急性期高血糖と関連に以前から注目が集まっている。
 1967年に初めて急性心筋梗塞患者の入院時高血糖が生命予後を悪化させることが報告3)されて以来,高血糖と患者予後に関する多くの報告が存在する。Kosiborodらは,14万人の急性心筋梗塞患者を対象とし,糖尿病の有無にかかわらず入院時高血糖自体が死亡率増加と強い関連があることを示した4)。さらに段階的に血糖値が上昇するにつれ,院内死亡率も増加することも明らかとなった(図1)5)。

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