はじめに
糖尿病患者に生じる意識障害として,低血糖昏睡が最も高頻度である。通常は血糖値が70mg/dL未満になると自律神経刺激症状が出現するため,患者自ら低血糖を認知し,重篤な意識障害には至らない。しかし,激しい運動時,アルコール多飲時,腎機能低下時,あるいは肝障害時など種々の生活状態と病態において,低血糖が遷延化し重篤化する。また,頻回の低血糖後や高度自律神経障害合併時には,インスリン拮抗反応が減弱するため,低血糖が無自覚化し重篤な意識障害を引き起こす。また,β遮断薬内服時にも交感神経刺激症状が生じず,中枢神経症状が急に出現し意識障害に至る。多くの場合は,糖質の補給により急速に低血糖から回復するが,自殺企図などによる大量のインスリン投与時や経口血糖低下薬の内服時,あるいは意識障害の発見が遅れた場合は,不可逆的脳障害から死に至る場合もある。本稿では,低血糖時の生体反応と,無自覚性低血糖について述べ,救急の現場の注意点と治療法について解説する。
全文記事
糖尿病と救急医療
重症低血糖に対する対処法と注意点
掲載誌
Diabetes Frontier
Vol.22 No.6 624-628,
2011
著者名
松久宗英
/
黒田暁生
記事体裁
特集
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全文記事
疾患領域
代謝・内分泌
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糖尿病
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精神疾患
診療科目
一般内科
/
糖尿病・代謝・内分泌科
/
手術・救急
/
精神科
媒体
Diabetes Frontier
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。