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糖尿病と救急医療

特集にあたって

田中逸

Diabetes Frontier Vol.22 No.6, 609, 2011

 慢性疾患の代表的な疾患である糖尿病において,救急医療が必要となる主なケースは,①血糖自体の異常,②急性合併症や慢性合併症の急速な悪化,③事故や災害時の対処,以上の3つである。血糖異常には糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)と高浸透圧高血糖症候群(HHS)による高血糖昏睡,および重症低血糖がある。急性合併症や慢性合併症の悪化で特に問題となるのは,脳卒中や急性冠症候群,心不全など動脈硬化性疾患の発症時,壊疽や潰瘍など血行障害と感染・炎症による足病変の急激な悪化,そして急性の重症感染症である。事故や災害で何と言っても問題になるのは,2011年3月11日に起こった東日本大震災のような災害時の対処である。

 そこで今回の特集では,①~③のすべてのケースを取り上げた。血糖異常については,高血糖昏睡と重症低血糖に分け,さらに小児は年齢や体格の問題から対処法を分けて考える必要があるため,小児1型糖尿病の急性期治療として別個に取り上げた。それぞれの項目に最も精通した糖尿病診療のエキスパートの先生方にご解説いただいた。合併症については,動脈硬化性疾患の急性期治療として脳卒中と心筋梗塞・心不全を取り上げ,神経内科と循環器内科の専門家にそれぞれの立場から疾患自体の急性期治療と血糖管理に関するポイントについてご解説いただいた。また感染症については,潰瘍や壊疽などの足病変と一般的な重症感染症を別個に取り上げ,それぞれ急性期治療と血糖管理についてご解説いただいた。なお10年前から集中治療室における血糖値を90~100mg/dL程度の厳格なレベルに維持することの是非を巡ってさまざまな議論が行われている。そこでこの問題も取り上げ,ICUやCCUにおける血糖管理をどう考えるべきかについて論じていただいた。最後に今回の東日本大震災では巨大地震に加えて巨大津波と原発事故も重なり,インスリンや経口薬剤,医療器具の不足,医療体制の崩壊,避難所での不自由な生活と疲労によるストレス蓄積,など血糖コントロール悪化を招くさまざまな問題点が浮き彫りになった。そこで災害救急と糖尿病に関して,中越地震のご経験もある八幡先生にご自身の経験も踏まえたアドバイスをお願いした。
 今回の特集を通して糖尿病と救急医療を巡る理解をさらに深め,診療レベルの向上にお役立ていただければ幸いである。


筆者プロフィール
田中 逸
聖マリアンナ医科大学代謝・内分泌内科教授

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