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高血圧と糖尿病~Clinical Up To Date~

Ⅰ 疫学 高血圧と糖尿病の心血管イベントの特徴と相乗効果

-日本人のエビデンス-

福原正代清原裕

Diabetes Frontier Vol.22 No.5, 474-478, 2011

はじめに
 高血圧と糖尿病はいずれも心血管病の代表的な危険因子であり,日常診療でよく遭遇する疾患である。わが国では人口の高齢化とともに,高血圧者は今後さらに増えることが予想されている。また,近年日本人の生活習慣が欧米化し,肥満,脂質異常症とともに糖尿病も急速に増加しており,いずれも深刻な医療問題となっている。高血圧と糖尿病の間には密接な関連があり,しばしば合併することが知られている。したがって,一般住民におけるその実態や予後を明らかにすることは,今後の心血管病の予防戦略を考え,国民の健康を守る上で重要な課題である。そこで本稿では,福岡県久山町において長年にわたり継続している心血管病の疫学調査(久山町研究)の成績より,高血圧と糖尿病の合併についてその頻度および臨床的特徴を明らかにし,心血管病に与える影響を検討する。

key words
高血圧/糖尿病/心血管病/疫学研究/久山町研究

Ⅰ.高血圧と糖尿病頻度の時代的推移

 久山町で1961年(1,612人),1974年(2,038人),1988年(2,637人),2002年(3,123人)に実施された循環器健診を受診した心血管病の既往がない40歳以上の住民の断面調査において,高血圧(血圧140/90mmHg以上または降圧薬服用)と耐糖能異常の頻度を求め,その時代的変化を検証した1)。
 年齢調整後の高血圧頻度は,男性では1961年38%,1974年43%,1988年44%,2002年42%とほとんど時代的変化はなく,女性ではそれぞれ36%,40%,35%,31%と時代とともに有意に減少したが,その変化は決して大きくはなかった。この間,降圧薬の服用頻度は1961年には男女とも約2%であったが,2002年では男性18%,女性17%といずれも大幅に増加した。その結果,高血圧者の血圧平均値は,1961年の男性162/91mmHg,女性163/88mmHgから2002年にはそれぞれ148/89mmHg,149/86mmHgになり,特に収縮期血圧が着実に低下した。
 同様に耐糖能異常の頻度をみると,男性では1961年12%,1974年14%,1988年39%,2002年55%,女性ではそれぞれ5%,8%,30%,36%といずれも著しく増加した。特に,1988年と2002年の健診では,40~79歳の受診者の大多数に75g経口糖負荷試験(oral glucose tolerance test:OGTT)を実施し,WHO基準(1998年)に基づいて耐糖能レベルを検討した結果,糖尿病の頻度は1988年の男性15%,女性10%から,2002年にはそれぞれ24%と13%に増加した。
 つまり,わが国の地域住民では,1960年代から2000年代にかけて年齢調整した高血圧頻度に大きな時代的変化はなかったが,高血圧治療の普及により高血圧者の血圧レベルが大きく低下した。一方,糖尿病を含む耐糖能異常は時代とともに急増した。

Ⅱ.高血圧と糖尿病の合併

 そこで,最近の集団において糖尿病と高血圧の合併頻度を検討した。
 2002年の健診でOGTTを受けた40~79歳の2,829名について,糖尿病の有無別に高血圧頻度を年齢調整して算出した(図1)。

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