はじめに  高血圧と糖尿病はいずれも心血管病の代表的な危険因子であり,日常診療でよく遭遇する疾患である。わが国では人口の高齢化とともに,高血圧者は今後さらに増えることが予想されている。また,近年日本人の生活習慣が欧米化し,肥満,脂質異常症とともに糖尿病も急速に増加しており,いずれも深刻な医療問題となっている。高血圧と糖尿病の間には密接な関連があり,しばしば合併することが知られている。したがって,一般住民におけるその実態や予後を明らかにすることは,今後の心血管病の予防戦略を考え,国民の健康を守る上で重要な課題である。そこで本稿では,福岡県久山町において長年にわたり継続している心血管病の疫学調査(久山町研究)の成績より,高血圧と糖尿病の合併についてその頻度および臨床的特徴を明らかにし,心血管病に与える影響を検討する。