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糖尿病網膜症診療の最前線

糖尿病黄斑浮腫の診断と治療

大谷倫裕

Diabetes Frontier Vol.22 No.4, 372-376, 2011

はじめに
 網膜のほぼ中心に位置する黄斑は,視力に最も重要な部位であり,黄斑に浮腫が生じた状態が黄斑浮腫である。黄斑浮腫はさまざまな眼底疾患に合併するが,糖尿病患者では9~10%に黄斑浮腫が起こり,視力低下の主因となっている1)。糖尿病黄斑浮腫(diabetic macular edema:DME)の診断は,主に検眼鏡やフルオレセイン蛍光造影(fluorescein angiography:FA)によって行われてきたが,客観的な評価は困難であった。光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)は1996年に商品化された診断器機である。網膜の断層像を非侵襲的に描出することができるため,DMEの診断と評価に活用されている。当初のOCTの分解能は20μmであったが,最新のOCTの分解能は3μmに向上しており,網膜視細胞の病態評価も可能である。さらにスキャンの高速化によって数秒で黄斑部網膜を立体的に表示することができる。本稿では,OCTを中心としたDMEの診断と評価,さらにDMEの治療について概説する。

key words
糖尿病黄斑浮腫/光干渉断層計/硝子体手術/嚢胞様黄斑浮腫/漿液性網膜剥離

I.正常黄斑(図1)

 視神経乳頭中心から4mm耳側・0.8mm下方を中心とする直径0.35mmの領域が中心窩で,中心窩を中心とした直径1.5~2mmの領域が黄斑である。さらに中心窩を中心とした直径5~6mmの領域を黄斑部と呼んでいる。黄斑はなだらかな傾斜をもつ陥凹を示し,中心窩で網膜厚は最も薄くなる(およそ130μm)。OCTでは,網膜外層に視細胞内節外節接合部(junction between the inner and outer segments of the photoreceptors:IS/OS)や網膜色素上皮が高反射ラインとして観察できる(図2)。

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