緩和ケアはがん対策推進基本計画においても重点項目とされてきたが,2015年に公表されたがん対策推進基本計画中間評価報告書にて,「患者が,苦痛が制御された状態で,見通しをもって自分らしく日常生活をおくることができること(からだの苦痛)」ができていると回答したがん患者の割合は57.4%であり,いまだ十分に苦痛が軽減されていない可能性が示唆された。緩和ケアに対するいわゆる“ギア・チェンジ”において,がん治療を行う医療者からの不適切な説明を含むバリアと,がん患者や家族が有するバリアがいまだに根強く残っていると考える。Advanced care planning(ACP)をはじめとする意思決定支援が行われたとしても患者の緩和ケアの否認は続くと思われ,精神心理的な苦痛の軽減を目的とした丁寧な対話が必要である。また,緩和ケア研修会をもって主治医の理解と行動の変容を促すだけではなく,患者が専門的な緩和ケア提供体制につながる仕組みが,今改めて求められていると考える。
特集 緩和ケア病棟が変わる:紹介のタイミングとその後の療養
患者/家族の立場から
①体験者:患者が確実に専門的な緩和ケアにつながる仕組みに向けて
掲載誌
がん患者と対症療法
Vol.28 No.1 29-33,
2019
著者名
天野 慎介
記事体裁
抄録
/
特集
疾患領域
癌
/
緩和医療
/
看護
診療科目
腫瘍内科
/
緩和医療
媒体
がん患者と対症療法
Key Words
がん対策推進基本計画,がん等における緩和ケアの更なる推進に関する検討会,緩和ケアの否認,スクリーニング,advanced care planning(ACP)
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。