緩和ケアはがん対策推進基本計画においても重点項目とされてきたが,2015年に公表されたがん対策推進基本計画中間評価報告書にて,「患者が,苦痛が制御された状態で,見通しをもって自分らしく日常生活をおくることができること(からだの苦痛)」ができていると回答したがん患者の割合は57.4%であり,いまだ十分に苦痛が軽減されていない可能性が示唆された。緩和ケアに対するいわゆる“ギア・チェンジ”において,がん治療を行う医療者からの不適切な説明を含むバリアと,がん患者や家族が有するバリアがいまだに根強く残っていると考える。Advanced care planning(ACP)をはじめとする意思決定支援が行われたとしても患者の緩和ケアの否認は続くと思われ,精神心理的な苦痛の軽減を目的とした丁寧な対話が必要である。また,緩和ケア研修会をもって主治医の理解と行動の変容を促すだけではなく,患者が専門的な緩和ケア提供体制につながる仕組みが,今改めて求められていると考える。