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がん病変の治療とともに歩む緩和ケア

肺がん患者へのがん治療と緩和ケアの連携

Co-operation between anti-cancer treatment and palliative care in lung cancer patients

田中桂子

がん患者と対症療法 Vol.22 No.2, 13-17, 2011

Summary
 肺がんの治療戦略は,近年大きく変化した。分子標的治療薬により効果的で副作用の少ない治療法を選ぶ「個別化した抗がん治療」が可能になり,TNM分類が改訂され,新規制吐薬により白金製剤が使用しやすくなった。肺がん患者で頻度が高く難治性である症状の緩和ケアについては,神経障害性疼痛に対する鎮痛補助薬,呼吸困難に対するモルヒネについて,最近ガイドラインで考え方が示された。緩和ケアは,一次・二次・三次のレベルにトリアージするシステムを構築することで限られた緩和ケアのリソースを有効に利用することが可能とされる。緩和ケア従事者も新しいがん治療について学ぶことで,がん治療と緩和ケアとのシームレスな連携が可能となる。

Recently, therapeutic strategies for lung cancer have drastically changed. Molecular-targeted drugs have enabled “personalized anti-cancer therapy”, in which a more effective therapy associated with few adverse reactions can be selected for each patient. In addition, TNM classification has been revised. Furthermore, introduction of novel antiemetics has made platinum preparations more accessible. Regarding palliative care for common and refractory symptoms in patients with lung cancer, guidelines have recently been issued on analgesic adjuvants for neuropathic pain and morphine for dyspnea. By establishing a 3-level triage system involving primary, secondary, and tertiary palliative care, limited resources for palliative care can be effectively utilized. Palliative care providers should also learn the new trends in anticancer therapy, thereby enabling seamless collaboration between anticancer treatment and palliative care.

Key Words
■分子標的治療(molecular-targeted therapy) ■神経障害性疼痛(neuropathic pain) ■呼吸困難(dyspnea) ■一次・二次・三次緩和ケア(primary, secondary and tertiary palliative care) ■多職種チーム医療(interdisciplinary team medicine)

はじめに

 2010年「New England Journal of Medicine」に発表された進行非小細胞肺がん患者を対象とした研究1)では,早期から緩和ケアを併用した群では標準的治療群に比較し有意にQOLが良好であり,抑うつ症状の割合が少なかった。さらに,緩和ケア併用群で生存期間の中央値が有意に長かったことは,センセーショナルな論議となった。
 がんの診断早期からの緩和ケアの重要性が認識され,緩和ケア従事者はがんの経過の早期から関わることが増えており,がん治療のup to dateを知ることが必要不可欠となってきている。緩和ケアチームとして,新規抗がん剤の新しい副作用対策にあたったり抗がん剤選択の意思決定に関する相談を受けたりすることもあるだろう。また,分子標的治療は全身状態の不良な患者に対しても使用または継続する意義があるとされ,在宅療養スタッフとして分子標的治療を引き継ぐこともあるかもしれない。
 本稿では,この数年で飛躍的に変化した肺がん治療のトピックスと,肺がん患者で特に頻度の高い神経障害性疼痛と呼吸困難の症状緩和について概説し,抗がん治療と緩和ケアの連携のあり方について概説する。

肺がん治療の進歩

 肺がんの治療戦略は,近年大きく様変わりした。1つ目は,いうまでもなく分子標的治療薬の登場であり,それにより効果的でより副作用の少ない治療法を選ぶ「個別化した抗がん治療」が可能になった。2つ目はTNM分類の改訂であり,過去のデータ蓄積に基づき適切な分類を行うことでより適切な治療法の決定をめざしている。3つ目は,制吐薬が大きく進歩し,肺がん化学療法のキードラッグである白金製剤がより使用しやすくなった。以下に,これらについて概説する。

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