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せん妄への対策とケア

せん妄患者のケア

Care of the patient with delirium

馬場華奈己

がん患者と対症療法 Vol.22 No.1, 32-37, 2011

Summary
 せん妄は,脱水や感染などの身体要因や薬剤の影響によって引き起こされる一過性の脳機能障害であり,意識の変容や注意力の障害,認知機能障害などを生じる。そのため,患者は自分が置かれた状況を認識することが困難となり,あらゆる面において大きな影響を与え,強い不安や苦痛を生じる。また,患者のみならず家族や医療者にとってもコミュニケーションが困難となり,大きな負担を生じる。
 せん妄は重症化すると回復が遅れ介入効果も減少するといわれており,早期発見・早期介入がケアのポイントとなる。せん妄が起きた場合には,患者との積極的な関わりを通して現実見当識を補強することにより患者の安心感を高め,二次的な問題を回避することが重要である。

Delirium is a transient disorder of brain function that can be caused by various factors, including dehydration, infection, other physical problems, or effects of drugs, and is primarily characterized by alterations in consciousness, attention, and cognition. Because of these abnormalities, patients with delirium have difficulty understanding the situation they are in, which in turn has significant impact on the patients in various ways that make them feel significantly anxious and distressed. Consequently, increased burden is placed not only on patients but also family members and health care providers, because of difficulty in communicating with the patients.
For successful care of delirium, early detection and early intervention are critical, because, once it becomes severe, interventions are less effective and recovery requires prolonged time. When delirium is noted, it is important to actively communicate with the patient to improve the patient's orientation and reassurance of reality, in order to avoid secondary problems.

Key Words
■予測と早期発見(prediction and early detection) ■環境調整(environmental optimization) ■認知機能の補強(improvement of cognitive function) ■睡眠-覚醒リズムの改善(improvement of sleep-wake rhythm)

せん妄で何が問題になるのか

 せん妄は睡眠-覚醒リズムの障害を起こすことが多く,「寝ぼけ」として誤解され放置されることも多い。しかし,せん妄は注意力の低下や判断力の低下,認知機能の障害などさまざまな症状を呈し,治療や生活のあらゆる面に大きな影響を与えている。

1.せん妄が引き起こすさまざまな問題

①せん妄の症状自体が患者に与える精神的な苦痛

例:自分の置かれた状況が把握できず,戸惑いや不安,落ち着きのなさを感じている
幻聴・幻視が出現し,不快感・恐怖感を抱くいいたいことが伝わらず苛立つ

②危険行動による事故

例:転倒・転落
点滴やバルーンカテーテル,ドレーンなどの自己抜去
物品(はさみ,果物ナイフ,筆記用具など)の誤った使い方による自傷
思考の混乱によって興奮し,暴力行為に至る

③コミュニケーションが困難になる

例:家族とのコミュニケーションが困難になる
(家族の衝撃,動揺も引き起こす)
患者が困っていることや症状を正しく伝えることができず,対応が遅れる
治療に必要な行動がとれず,予定された治療,検査が遂行できない

④アドヒアランスが低下する,意志決定能力が障害される

⑤褥創,誤嚥などの二次的合併症を生じる
⑥医療スタッフの疲弊
⑦入院期間の長期化

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