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せん妄への対策とケア

せん妄患者のアセスメント

Assessment of delirium

金子亜矢子

がん患者と対症療法 Vol.22 No.1, 26-31, 2011

Summary
 せん妄には多彩な症状があり,他の精神疾患や身体状態によって生じる精神症状と重なること,複合的・多要因で生じることなどからアセスメントが難しい。
 本稿では,米国精神医学会の診断分類DSM-Ⅳ-TR 1)の基準を活用したせん妄の判断方法と,せん妄発症の3要因をアセスメントする方法を紹介する。
 せん妄を判断する4つの視点とは,注意力の障害,知覚や認知の障害,急性発症と変動性,器質因である。また,せん妄発症の3要因は,素因,促進因,器質因である。せん妄症状を改善するためには,要因をできるだけ少なくすることが鍵になる。したがって,要因を明確にするとともに,どの要因にアプローチすることが最も適切なのかを丁寧にアセスメントすることが必要である。

Delirium involves various symptoms, and its assessment is difficult for a number of reasons, including that delirium shares similar psychiatric symptoms with other psychiatric diseases and physical conditions, and that the etiology is complex and multifactorial.
This article introduces methods for determination of delirium with use of the diagnostic criteria developed by the American Psychiatric Association, DSM-IV-TR 1), as well as methods for assessment of three categories of causative factors of delirium.
Delirium can be determined based on the following four features: attention deficit, impaired perception or cognition, acute onset and fluctuating course, and physiological factors. The three categories of causative factors of delirium are predisposing factors, precipitating factors, and physiological factors. The key to improving delirium symptoms is to minimize the causative factors. To enable this, it is necessary to identify and carefully assess the causative factors in individual patients to determine which factors are most appropriate as the target of approach.

Key Words
■せん妄(delirium) ■アセスメント(assessment) ■せん妄の判断方法(methods for determination of delirium) ■せん妄発症の3要因(three categories of causative factors of delirium)

はじめに

 せん妄には低活動型と過活動型があり,症状の現れ方は多彩で個別性がある。また,認知症やうつ状態と似通った症状を有していることもあり,アセスメントが難しい。さらに,身体状態によって生じる精神症状とせん妄の症状とが重なる部分をもつことや,複合的・多要因であることもアセスメントの難しさにつながる。また,臨床ではがんの終末期において低活動型のせん妄とうつ状態とが間違われたり,死に至る過程で起こるものとして見逃されたりし,可逆的な症状であっても適切な対処がなされないこともある。的確なアセスメントによって予防的側面も考慮した早期対応を工夫することができ,患者の安全の確保や苦痛を低減化させて患者の意思を反映した医療の提供につなげることができる。

アセスメントツール

 アセスメントに活用できるツールは,『日本語版NEECHAM混乱/錯乱スケール』や『日本語版せん妄評価尺度98年改訂版』,『せん妄スクリーニング・ツール』,『Mini-Mental State Examination(MMSE)』など,複数ある。これらはスクリーニング目的,診断目的,重症度の評価目的などそれぞれの特徴があり,特徴を理解して活用方法を工夫すれば効果的である。ただし,これらのツールを使用し,チームで働くスタッフが一貫性をもって患者の状態をアセスメントするためには,しっかりとした知識と観察力,情報収集力を養い,時間をかけて熟達する必要がある。
 以上のことから,当院ではせん妄か否かの判断には米国精神医学会の診断分類であるDSM-Ⅳ-TR 1)の基準を活用し,さらにせん妄発症の3要因2)をアセスメントする方法をとっている。せん妄の有無を判断する場合,4項目ならば記憶しやすく,各項目をきちんと理解してアセスメントすれば確実に判断できるようになるため,筆者はこれらの項目をチェックするタイプの相談依頼用紙(図1)を作成して使用してもらっている。

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