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せん妄への対策とケア

せん妄を起こしやすい薬剤と薬剤調整

Drugs to induce delirium and medication adjustment

玉井英子塩川満

がん患者と対症療法 Vol.22 No.1, 19-25, 2011

Summary
 せん妄はあらゆる状況で発症し,進行がん患者では約8~40%にみられ,終末期には約27~83%に増加すると報告されている。緩和ケア領域で認められるせん妄は遷延することが多くさまざまな原因が関与しているといわれており,その代表的な原因として薬剤性せん妄が挙げられる。緩和ケア領域で認められる薬剤性せん妄の原因には,オピオイド,ベンゾジアゼピン系薬剤,副腎皮質ステロイド薬などが関与している。
 本稿では,進行がん患者でせん妄を起こしやすいこれらの薬剤に着目し,その原因や対策,薬剤調整に焦点をあてて述べる。

Delirium can occur concurrently with any condition. Its incidence is reported to be about 8% to 40% in advanced cancer patients and increases to about 27% to 83% in terminal stages. Many cases of delirium observed in the area of palliative care are said to be prolonged due to various causes. The typical case is drug-induced delirium. Drugs that can induce delirium in the area of palliative care include opioids, benzodiazepines, and corticosteroids.
This article describes these drugs, which are more likely than other drugs to produce delirium in advanced cancer patients, focusing on the causes of delirium, measures to be taken, and medication adjustment.

Key Words
■薬剤性せん妄(drug-induced delirium) ■オピオイド(opioids) ■ベンゾジアゼピン系薬剤(benzodiazepines) ■相互作用(interactions) ■H2受容体拮抗薬(H2 blockers) ■抗ヒスタミン薬(antihistamines) ■副腎皮質ステロイド薬(corticosteroids) ■抗コリン薬(anticholinergics)

はじめに

 せん妄とは軽度~中等度の意識障害が主症状であり,幻覚,妄想,興奮などの精神症状を伴うことがある。また,症状の日内変動が存在し1時間~1日単位で変動し,睡眠,精神運動,感情にも影響する1)。せん妄は急性に発症し,数時間~数日間持続し,基本的に一過性であり可逆的である。せん妄はあらゆる状況で発症し,進行がん患者では約8~40%にみられ,終末期には約27~83%に増加すると報告されている2)。緩和ケア領域で認められるせん妄は遷延することが多く,患者やその家族に不安や恐怖といった大きな苦痛をもたらすことになる。せん妄にはさまざまな原因が関与しているが,その代表的な原因として薬剤によるものが挙げられる。薬剤性せん妄の原因薬剤は多種多様であり,せん妄の原因をみつけだすためにはどのような薬剤がせん妄のリスクをもっているのかを認識するとともに,その対策についての理解が必要である。本稿では,せん妄の原因の1つである薬剤性せん妄の対策や薬剤調整について焦点をあてて述べる。

せん妄の原因とは

 せん妄はさまざまな原因で起こる症候群であるが,進行がん患者においてはせん妄の原因は1つではなく多因子が複合的に関与していることが多く,約3分の2のせん妄患者は原因が複数あるとの報告もある3)4)。せん妄の発現因子に関しては,臨床的に直接原因,準備因子,誘発因子の3つに分類することができる(表1) 5)。

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