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せん妄への対策とケア

せん妄に対する治療

Management of delirium in cancer patients

秋月伸哉

がん患者と対症療法 Vol.22 No.1, 12-18, 2011

Summary
 がん患者のせん妄は頻度が高く,患者の苦痛につながるのみならずさまざまな問題を引き起こす。多くが治療に反応するため,適切な介入を行うことが重要である。せん妄の基本的治療戦略は,①医学的管理,②環境的・支持的介入,③薬物療法である。患者の個別の状況に応じて,原因の評価と対応,ゴール設定,リスクマネジメントなどの医学的管理と,見当識障害や興奮を和らげ,本人や家族の不安を軽減するための環境的・支持的介入を必ず行い,十分にせん妄症状が和らげられない場合はハロペリドールなどの抗精神病薬を中心とした薬物療法を行う。終末期では,これらに加えて死別を前にした家族へのケア,持続鎮静などのテーマも扱う必要がある。

Delirium is common among cancer patients, and is not only distressing to patients but can cause various other problems. As delirium responds to treatment in many cases, appropriate intervention is important. Treatment of delirium involves three basic strategies : 1. medical management, 2. environmental and supportive interventions, and 3. pharmacotherapy. Specific treatment will depend on the situations of individual patients, but should comprise medical management including evaluation of presumed causes and corrective measures, goal setting, and risk management, as well as environmental and supportive interventions for reduction of disorientation and agitation to alleviate anxiety in both patients and family members. If delirium is still inadequately controlled, pharmacotherapy may be started, primarily with antipsychotics such as haloperidol. If the patient is terminally ill, the care will involve other issues such as continuous sedation and pre-bereavement support for family members.

Key Words
■オピオイド・ローテーション(opioid rotation) ■ゴール設定(goal setting) ■リスクマネジメント(risk management) ■環境調整(environmental optimization) ■抗精神病薬(antipsychotics) ■終末期せん妄(terminal delirium)

せん妄治療はなぜ重要か

 せん妄とは,薬剤やさまざまな身体的な問題により脳機能が障害され,さまざまな精神症状を呈する意識障害の一種である。術後や終末期など,身体的負荷が強い時期に頻度が高いことが知られている1)。せん妄は,点滴ルートの自己抜去や転倒などの事故の原因になる,がん治療アドヒアランスを低下させる,疼痛をはじめとする症状評価を適切に行えなくする,治療選択の意思決定を行えなくする,家族とのコミュニケーションを妨げる,医療スタッフが疲弊するなど,さまざまな問題を引き起こす。何より,せん妄は体験している本人にとって強い苦痛である2)。せん妄体験のなかでも,特に幻覚や妄想が苦痛を伴う体験である。また,介護者にとっては低活動型せん妄より過活動型せん妄のほうが苦痛であるが患者にとっては低活動型せん妄も同様に苦痛であるため,低活動型せん妄への治療の必要性を見過ごすべきではない。
 せん妄の多くは可逆性の病態であるが,終末期に近づき原因が多要因になるほど治療は困難になる。一方で,適切な介入を行うことで終末期のせん妄でも半数程度は改善することも報告されている1)。
 以上のように,過活動型,低活動型せん妄のいずれも患者にさまざまな不利益をきたし,介入により改善可能な病態であることから,医療者はせん妄に対して常に何らかの治療的介入(薬物療法,非薬物療法を含む)を検討すべきである。

せん妄のマネジメント

 がん患者のせん妄の治療には,医療チームでの医学的管理,環境調整,薬物療法といった包括的なマネジメントが必要である。

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