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せん妄への対策とケア

せん妄の要因と診断

Factors and diagnosis of delirium

井上真一郎内富庸介

がん患者と対症療法 Vol.22 No.1, 6-11, 2011

Summary
 せん妄は入院患者に比較的よくみられる病態であり,その発症要因としては①直接因子,②誘発因子,③準備因子の3つに分類される。それぞれの因子についての理解を深めることがせん妄を治療するうえで重要であり,それはせん妄の予防的介入や早期発見・早期対応にもつながる。せん妄発症の引き金となる直接因子を同定するためには,可能性のある種々の疾患を念頭におきながら必要な検査を進め,投与されている薬剤もチェックする必要がある。
 せん妄の診断は,DSM-Ⅳ-TRやICD-10による。その診断の際,臨床的には認知症やうつ病,さらには夜間異常行動をきたす睡眠障害などとの鑑別が重要である。

Delirium is a relatively common condition in hospitalized patients, and its causative factors can be classified into three categories : 1. direct factors, 2. precipitating factors, and 3. predisposing factors. Deepened understanding of individual factors is not only important in the treatment of delirium, but also leads to prophylactic interventions, early detection, and early corrective measures. To identify the direct factors that trigger delirium, a series of examinations should be performed while taking various possible diseases into consideration, and all drugs used by the patient must also be checked.
Delirium is diagnosed according to the DSM-Ⅳ-TR or ICD-10 criteria. When making the diagnosis, it is clinically important to rule out dementia, depression, and sleep-related problems or other disorders that cause nocturnal behavior disorder.

Key Words
せん妄(delirium),意識障害(disturbance of consciousness),直接因子(direct factors),誘発因子(precipitating factors),準備因子(predisposing factors)

はじめに

 せん妄は臨床場面で比較的よく遭遇する病態であり,担がん入院患者においては約25%,終末期には約85%に認められるとの報告がある1)2)。
 しかしながら,その理解や対応についてはかなり誤解があるのも事実である。先日も,夜間せん妄を認めている患者の往診に行った際,若い看護師から「先生,○○さん,昨日の夕方からここが病院ということもわからなくなって……ずっと独り言を言ったりして困っているんです。急に認知症になったりすることってあるのでしょうか?精神科の病棟に転科したらよくなるでしょうか?」と言われたことがあった。
 よく混同されることだが,せん妄と認知症は全く別のものであり(表1),せん妄の本態は急性発症の意識障害である。

ただし,せん妄患者は一見意識清明にみえることがあり,その点が非常に誤解されやすいところである。
 また,せん妄は身体疾患を有する患者によくみられるが,その直接因子が身体疾患の場合,その治療が行われることがせん妄の改善につながる。たとえば,担がん患者によくみられる高Ca血症によってせん妄をきたしている場合,高Ca血症を引き起こしている悪性腫瘍の治療やCa値の補正を行うことでせん妄の改善が期待できる。よって,対症療法として不眠・不穏や幻覚・妄想などに対する薬物療法を行うことも必要であるが,主たる治療は身体的治療であることが多く,「せん妄=精神科のみで扱う疾患」という考えは当を得ていないと言えるかもしれない。
 本稿では,最初にせん妄の要因について述べ,次に診断に至る流れについて概説する。また,最後に鑑別診断についても触れる。

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