対談「わが研究を語る」では,1つの研究テーマに真摯に取り組んでこられた先生方から,その研究に着手されたきっかけやその成果,現在の研究から今後の展開についてまでのお考えをお聞きしてまいります。今回は,マスト細胞の研究を精力的に行いヒト・マスト細胞の培養方法を確立された国立成育医療研究センター副研究所長の斎藤博久先生にお話をうかがいます。(聞き手:海老澤元宏)
「ビギナーズラックで好塩基球の培養に成功」
海老澤:先生はヒト・マスト細胞の培養法を確立されるなどマスト細胞の研究をライフワークとしてこられましたが,どのようなきっかけでマスト細胞の研究を始められたのでしょうか。
斎藤:私は自分で道を切り開くというよりは指導者にいわれたことに対してこつこつと取り組むタイプですので,マスト細胞の研究も指導者の勧めで始めました。1977年に東京慈恵会医科大学医学部を卒業後,研修を終えた1979年に小児科学講座のアレルギー研究班に入りましたが,そこの長であった富田有祐先生(現 トミタ診療所)に「マスト細胞,好塩基球を培養できる人が米国から当大学に来たので習得してくるように」といわれたことがきっかけです。