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Pro/Con紙上討論

第5回運動誘発性喘息の予防薬

服部知洋橋本修金廣有彦永田真

喘息 Vol.24 No.2, 89-99, 2011

ロイコトリエン受容体拮抗薬の立場から
はじめに
 運動誘発性喘息(exercise induced asthma;EIA)は,75~80%の喘息患者でみられるといわれている。発症機序は,気道上皮のwater lossによる浸透圧変化が肥満細胞を刺激し,ロイコトリエン,ヒスタミンなどを分泌して気道収縮を引き起こすと考えられている1)。

 ロイコトリエン受容体拮抗薬(leukotriene receptor antagonist;LTRA)は気管支喘息の長期管理薬として十分に認識されているが,近年においてEIAに対する有用性も数多く報告されている。
 本稿では,EIAの予防薬としてLTRAの立場から,その有用性について言及する。

ロイコトリエン受容体拮抗薬の立場から(続き)

システイニルロイコトリエンの特徴

 システイニルロイコトリエン(cysteinyl leukotrienes;CysLTs)であるLTC4,LTD4,LTE4は,CysLT1受容体に結合し作用する。EIAの病態で重要な働きをする肥満細胞からもCysLTsが産生され,CysLT1受容体が分布する2)。
 各種気道収縮物質のなかでもLTD4は最も強力で,ヒスタミンの約1000倍,メサコリンの約10000倍の気管支平滑筋収縮作用を有しており3)4),LTE4はその作用が最も弱い。作用発現までの時間はLTD4,LTE4が約4~6分であり,LTC4は約10~12分とやや遅れる。また,作用持続時間ではLTE4が最も長い5)。
 CysLTsは血管透過性亢進,気道粘液分泌亢進,好酸球の遊走・活性化などの作用も有しており,喘息病態に深く関わっている。
 Mechicheらは,ヒト気管支切片を用いた検討において,CysLTsは末梢気道に対して中枢気道よりも30倍強力に気道を収縮させると報告している6)。以上は,中枢気道から末梢気道の幅広い気道収縮に対してLTRAが有効であることを示唆しており,EIA予防治療においてもLTRAが有用であることが容易に推測される。

EIAの予防薬としてのLTRA

 実際の臨床現場においてEIAへの対応を求められた場合は,必ず最初に長期管理薬の見直しが必要である。吸入ステロイド薬が十分に投与されているかは,重要な確認事項である。なぜなら,EIAは持続する慢性気道炎症のうえに起こることが実際に多く,持続型喘息の一症状として現れるからである。また,薬物によらない予防的対応(ウォーミングアップ,マスクの着用,普段からのトレーニング)の指導も必要である。以上の点をふまえたうえで,EIAの予防薬としてLTRAの有用性について述べる。
 LTRAのEIAに対する有用性の報告は,短期投与や単回投与を含め,数多く認められる。Meloらは,小児喘息患者を対象にEIAに対するモンテルカストの効果を調べ,運動負荷前にモンテルカストを1週間投与すると,誘発直後の1秒率の低下を著明に抑制し,遅発性喘息も予防したことを報告している7)。Carlsenらは,成人では1回のモンテルカスト投与によってもEIAは抑制され,2日間のモンテルカスト投与により成人だけでなく小児でもEIAは有意に抑制されたと報告している8)。また,一般的にLTRAの効果が大きいとされている投与12~24時間後と比べて,単回投与2時間後も同等にEIAの抑制効果を示したとする報告もある9)10)。プランルカストについても,わが国の小児において単回あるいは2回投与によるEIAの抑制効果が報告されている11)12)。
 当教室のデータでは,プランルカストの2週間投与において55.5%の患者に有効以上のEIA阻止効果を認め13)(図1),モンテルカストの単回投与(運動負荷試験当日朝9時にモンテルカスト10mgを単回投与し,4時間後に運動負荷試験を行った)でも85.7%の患者に有効以上のEIA阻止効果を認めている14)(図2)。

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