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アレルゲンと免疫療法の再考

食物アレルギーに対する経口免疫(減感作)療法

Oral immunotherapy for food allergy and anaphylaxis

海老澤元宏佐藤さくら宇都宮朋宏今井孝成林典子柳田紀之

喘息 Vol.24 No.1, 71-75, 2011

Summary
 低年齢児の食物アレルギー(FA)は,自然寛解も十分に期待できるので負荷試験を行い,必要最小限の食物除去の指導を行うことに重点を置くべきである。経口免疫療法(OIT)は,3歳以降でも耐性化しない例に対して食物の特性やアレルゲン性に基づいて負荷試験を行い,誘発症状の評価を正しく行い,対象と方法を選択していくべきである。
 OITはFAへの積極的な耐性誘導方法となる可能性はあるが,現時点では研究段階であり,一般診療としてはまだ推奨できる段階ではない。OITの作用機序,有効性,副作用などを明らかにしたうえで,適応症例の明確化,効率的で安全性の高い標準的な方法の開発が求められる。

Key words
食物アレルギー,アナフィラキシー,経口免疫療法,減感作,耐性化

はじめに

 乳幼児期に発症した卵,牛乳アレルギーは6歳頃までに多くが耐性を獲得し,それ以降は耐性獲得のスピードが鈍ることが知られている1)2)。従来は,このような患者に積極的に耐性化を誘導する方法はなく,必要最小限の食物除去を継続しながら負荷試験を繰り返し,自然の耐性化を待たざるをえなかった。近年,小児の食物アレルギー(food allergy;FA)に対して経口免疫(減感作)療法(oral immunotherapy;OIT)の有効性が相次いで報告されている3)-7)。今後,OITはFAへの積極的な耐性誘導方法となる可能性はあるが現時点では研究段階であり,一般診療としては2010年公開の米国国立衛生研究所(NIH)のガイドラインなどでもまだ推奨されていない。今後は,OITの効果,作用機序,耐性化の有効性などを明らかにしたうえで,適応症例の明確化,効率的で安全性の高い標準的な方法の開発が求められる。

Ⅰ OITとその意義

 OITは,マスコミでも最近しばしば取り上げられ,話題性を求めるマスコミは「食べれば治る」と報道したがる。しかし,過去数年間の当院の経験からは,OITはまず「原因食物を少量でもよいから安全に何とか食べさせる」から始まり,「食べると症状が出なくなる」を経て,「治る」を最終目標に行う治療である。「食べれば治る」が一人歩きをしていくのは,若干心配である。OITは,①微量で激烈な症状が出るために避けざるをえなかった患者のアナフィラキシー(anaphylaxis;An)対策の一環として,②ある程度の許容量はあるが増量すると症状が出てしまうような患者をより早く寛解に導くため,の二通りの意義があると考えられる。
 OITは負荷試験を行い“症状の出現”を直近で確認し,さらに誘発量を明らかにしたうえで行うものである。しかし,“症状の出現”といっても軽度の口周囲の発赤,顔面から頸部の蕁麻疹など軽微な症状では,負荷試験後に数回繰り返し摂ってもらうと無症状になることを8割ほどの症例で経験する。したがって,負荷試験後の指導をどのように行うかがOIT対象の決定(「OITもどき」を含んでしまうか)に大きな影響を与える。
 また,負荷試験をどのように行うかもOIT対象の決定に影響を与える。卵アレルギーを例に挙げると最もわかりやすいが,同じ卵アレルギーといっても,①生卵アレルギー(生のアレルゲン性にのみ反応),②生卵黄アレルギー(マヨネーズ,カスタードクリーム,アイスクリームなどには反応するが加熱卵は摂取可),③加熱卵アレルギー(加熱卵黄のつなぎは摂取可:20分の1程度の加熱卵白微量混入は可だが,加熱卵白量が増えると症状が出る),④微量加熱卵白アレルギー(加熱卵黄のつなぎでも反応してしまう),に分類可能である。当院では,それらのステップ別に負荷試験を行っており(図1),このことにより,食物除去を最小限に抑えることが可能となる。

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