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アレルゲンと免疫療法の再考

小児気管支喘息・アレルギー性鼻炎への免疫療法の現状と可能性

Immunotherapy for childhood asthma and allergic rhinitis : present and future

藤澤隆夫

喘息 Vol.24 No.1, 63-70, 2011

Summary
 アレルゲン特異的免疫療法は,アレルギー疾患における免疫異常にアプローチする根本的な治療になりえる。その有効性は多くの臨床研究で証明されており,特に小児では発症予防や早期の寛解導入など自然歴自体を変える可能性も示されている。しかし,現在のわが国においては標準化されたアレルゲンエキスの整備,保険診療としての確立,副反応への対策など解決すべき課題は多い。さらに,舌下免疫療法,抗IgE抗体(オマリズマブ)併用による免疫療法など新たな治療戦略の開発も望まれる。

Key words
アレルゲン,免疫療法,制御性T細胞,アナフィラキシー,オマリズマブ

はじめに

 現在のアレルギー疾患治療は炎症の制御を目標とした薬物療法が主流となっているが,ガイドラインに基づいて適切な薬剤選択を行えば,小児では多くの例でコントロールは難しくない。しかし,これらの薬物療法は治癒をもたらすものではなく,コントロールについても薬物だけでは困難な重症例もあるのは事実である。たとえば,小児の気管支喘息は思春期に寛解するとされるが,吸入ステロイド薬を用いてほぼ完全にコントロールしても,中止すると再燃する例がある。また,乳幼児期など早期に介入しても,投与中は有効ながら中止するとプラセボと同等になってしまうと報告されている。さらに,アレルギー性鼻炎では思春期寛解という現象さえ認められていない。一方,アレルゲン特異的免疫療法は免疫反応自体をモディファイできるので,より根本的な治療としてのポテンシャルを有する。最近の免疫学の進歩で奏効機序も解明されつつあり,より副作用のない有効な治療法開発への研究も進んでいる。しかし,わが国では限られた施設でしか行われていないのが現状である。欧米ではアレルギー専門医による治療選択肢の1つとしてガイドラインにも記載されていることを考えると,立ち後れの感は否めない。わが国においても免疫療法で恩恵を得られる患者は少なくないので,治療環境の整備は急務と考える。
 本稿では,小児におけるアレルゲン特異的免疫療法の現状,これまで明らかにされてきた効果,そして今後の可能性について考えてみたい。

Ⅰ わが国での現状

 今,わが国では免疫療法はほとんど行われていないといってよい。かつては,小児の喘息とスギ花粉症には基本治療的な位置を占めていたが,薬物療法と異なって即効性に欠けること,効果判定の客観的指標が明らかでないこと,標準化されたアレルゲンエキスがスギのみであること(スギ花粉以外の標準化された治療用エキスは,公益財団法人 日本アレルギー協会が仲介して米国から個人輸入することも可能ではある),保険診療での評価が低いこと,そして副反応のリスクがあることなど,多くの要因が障壁となっている。
 特に,免疫療法の実施に際してはアナフィラキシーなど起こりえる有害事象に対する十分な人員配置と体制を整える必要があるが,これに見合う診療報酬が認められていない現状は病院を消極的にさせる。さらに,薬価が低く抑えられているために,製薬企業を新たなアレルゲンエキスの開発に向かわせることも難しい。
 しかしながら,今や国民病とさえいわれるアレルギー疾患克服のためには,免疫療法により重点的にリソースを配分することは急務ではないだろうか。これによって,最終的には医療費の削減につながるはずである。

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