印象に残る喘息症例
―内科編― 40年間続けて診療してきた喘息症例
喘息 Vol.20 No.2, 78-79, 2007
秋に喘息発作で, 当時の龍ヶ岳町立上天草病院内科の私の外来に飛び込んできた症例である. 当時, その患者のN氏は41歳で私より9歳年上の男性だった. 精悍な顔つきで筋骨隆々としており, 地元の漁師のリーダー的存在だった. 髪は黒々で顔は真っ黒に日焼けして眼が爛々と輝いていたので, 初めは少し怖い感じもしたが, 慣れてくると実に愛すべき人間性の持ち主だった. その頃は連日のように早朝から不知火海に出漁しており, 船上での激しい作業のせいか, 時に発作を起こしては朝一番に私の外来に飛び込んできていた. 話は前後するが, 1967年熊本大学医学部内科で大学院を終えた私は, 教授の命令で天草上島にある龍ヶ岳町立病院(現在は上天草市立総合病院)に内科医長として赴任した. 大学院で血液学の臨床研究をやっていた私には, まだ一人前の内科医としての力量は備わっていなかったが, 辺鄙な離島の病院では着任早々からどんな病気の患者も診療しないわけにはいかない状況にあった. しかし, 離島の病院とはいっても, 特色としては院長が外科医ながら喘息治療に強い興味をもっており, 天草の自然環境を生かして小児喘息児の施設療法を行っていた. 常勤の小児科医が不在なこともあって, 私は院長に協力して小児喘息病棟の診療も担当するようになり, それをきっかけに喘息との縁が始まったのである.
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※記事の内容は雑誌掲載時のものです。