窒素含有ビスホスホネート製剤(BP製剤)は,メバロン酸カスケードを阻害することによって破骨細胞をアポトーシスに導く.経口BP製剤は主として骨粗鬆症治療に,また,注射BP製剤はがん患者における骨関連事象を減少するために用いられる極めて有用な薬剤である1).ところが2003年,注射BP製剤使用患者において,BP製剤関連顎骨壊死(BRONJ)の発症が初めて報告された2).BRONJの発症契機の約60%は抜歯であり3),発症後は口腔関連QOLを著しく低下させる場合がある.BRONJは,BP製剤と抗がん剤の併用投与を受けている多発性骨髄腫患者や乳がん患者で発症頻度が高い.アルキル化剤であるシクロホスファミド(Cyclophosphamide:CY)は,多発性骨髄腫患者や種々の悪性腫瘍でよく使用される抗がん剤の一つだが4),BP製剤併用の有無にかかわらず,CYの投与濃度が抜歯窩治癒に与える影響はよくわかっていない.したがって,本研究はCYの投与濃度の違いならびにCYとBP製剤の併用投与が抜歯窩の硬軟組織治癒に与える影響を明らかにすることを目的とした.C57B6/Jマウスを用いた.低濃度CY(50mg/kg;CY-L)単独投与群,中濃度CY(100mg/kg;CY-M)単独投与群,高濃度CY(150mg/kg;CY-H)単独投与群,BP製剤[ゾメタ(ZA):0.05mg/kg]単独投与群ならびに,CYとZAの併用投与群(CY-L/ZA,CY-M/ZA,CY-H/ZA)の合計8群を作製した.薬剤の投与期間は7週間で,薬剤投与開始3週間後に上顎両側第一臼歯を抜歯し,その4週間後に屠殺をした.抜歯窩治癒は,マイクロCT,各種組織染色ならびに免疫染色を行い定量評価した.統計解析にはANOVA検定かKruskal-Wallis検定を用いた.
MEDICAL EYE
マウスのビスホスホネート製剤関連顎骨壊死様病変は,抗がん剤の濃度依存性にその発現が増大する
掲載誌
THE BONE
Vol.32 No.3 3-10,
2019
著者名
佐々木宗輝
/
黒嶋伸一郎
/
澤瀬隆
記事体裁
連載
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抄録
疾患領域
骨・関節
診療科目
整形外科
媒体
THE BONE
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。