進行性骨化性線維異形成症(Fibrodysplasia Ossificans Progressiva:FOP)は,骨格筋の中に異所性に軟骨組織や骨組織が形成される遺伝性の稀少疾患である.過去10年の研究により,FOPの責任遺伝子と変異が同定され,新しい診断法や治療法が開発されつつある.また,FOPにおいて出現する軟骨や骨芽細胞の前駆細胞は,骨格筋の間質に存在する間葉系細胞であることも明らかとなった.FOPは,筋と骨・軟骨に新しい接点をもたらしている.
「はじめに」個体発生や組織の再生過程からも予想されるように,骨格筋,靱帯,腱,軟骨,および骨を含む「運動器」は,極めて近縁の細胞群によって形成される.どのような前駆細胞が,どのようなシグナルによって組織特異的細胞へ分化していくのか,その分子メカニズムは依然として不明な点が多い.こうした生命現象に重要な分子メカニズムの解明が,遺伝性疾患の責任分子の研究に端を発する例を数多く挙げることができる.
「key words」骨格筋,異所性骨化,TGFβファミリー,受容体,ALK2