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骨代謝研究の最近のトピックス―基礎と臨床―

新たなアプローチ:骨形成促進薬

Bone anabolic agents

木下祐加福本誠二

THE BONE Vol.26 No.2, 87-92, 2012

 近年,各種骨形成促進薬の開発が進められている.副甲状腺ホルモン製剤は,骨密度上昇および骨折抑制効果が大規模臨床試験で確かめられたことから,すでに臨床応用されている.その他,Wntシグナル伝達経路を活性化する抗スクレロスチン抗体や抗Dkk-1抗体,カルシウム感知受容体の拮抗薬であるcalcilyticsの骨形成作用が注目され,動物を用いた検討やヒトに対する治験が行われている.

key words
parathyroid hormone,teriparatide,osteoporosis,sclerostin,Wnt signaling

はじめに

 従来の骨粗鬆症治療薬は,ビスフォスフォネートに代表される骨吸収抑制薬が中心となっていた.一方近年,各種骨形成促進薬の開発と臨床応用が進んでいる.わが国でもすでに販売が開始された副甲状腺ホルモン製剤に加え,Wntシグナルを介して骨形成を促進する抗スクレロスチン抗体や抗Dkk-1(dickkopf)抗体,カルシウム感知受容体の拮抗薬であるcalcilyticsなど,異なる機序により骨形成を促進する薬剤の実用化が検討されている.本稿では,これらの薬剤の作用機序,およびこれまでに行われた臨床試験の結果について概説する.

副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone:PTH)

1.作用機序

 カルシウム調節ホルモンであるPTHは骨を主な標的臓器の一つとし,骨吸収と骨形成のいずれをも促進する.実際,PTHの連日間歇投与により,骨形成マーカーと骨吸収マーカーの両者が上昇することが知られている.通常の骨代謝では,骨吸収と骨形成のカップリングと呼ばれる機構により,骨吸収が亢進する場合には骨形成も上昇する.一方,PTHの連日間歇投与では,骨吸収マーカーの上昇に先んじて骨形成マーカーが増加する.このことは, PTHが骨吸収を介さないde novoの骨形成促進作用を有するためと考えられている.PTHの骨形成促進作用の詳細な機序には不明な点が残されているが,後述のWnt系の活性化,insulin-like growth factor-Ⅰ作用の亢進などの可能性が報告されている.
 PTHの持続的過剰状態である原発性副甲状腺機能亢進症では,主に皮質骨における骨吸収亢進に伴う骨密度低下が認められる.一方,PTHを間歇投与した場合には,特に海綿骨の骨量が増加する.ヒトにおけるPTH製剤の効果は,1980年にReeveらが初めて報告した.彼らはPTH(1-34)の連日単回皮下投与が海綿骨量を増加させることを,腸骨生検により示している1).また, HodsmanらはPTH(1-34)投与に伴う骨代謝マーカーの変化を観察し,持続的経静脈投与ではなく間歇的皮下投与により,骨形成が促進されることを示した2).PTHは84個のアミノ酸からなるペプチドであり,受容体との結合にはそのN端側が必要とされる.これまでに,N端34個のアミノ酸からなるヒトPTH(1-34)(teriparatide),および全長ヒトPTH(1-84)の両者が製剤化されている.

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