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骨代謝研究の最近のトピックス―基礎と臨床―

脂質代謝・動脈硬化と骨代謝

Association of bone metabolism with lipid metabolism and atherosclerosis

山口徹杉本利嗣

THE BONE Vol.26 No.2, 67-71, 2012

 脂質代謝・動脈硬化と骨代謝は病態的に関連性を有する.基礎研究において,LDL酸化物質は骨髄間質細胞に働き骨芽細胞への分化を抑制する一方,前脂肪細胞の脂肪細胞への分化を促進し,骨格の脂肪髄化を惹起して骨量減少をきたす可能性がある.Wntシグナル経路の受容体をコードするLRP5/6遺伝子が不活化すると,骨量減少と同時に高コレステロール血症を発症する.一方,臨床研究においては動脈硬化の進展と骨量減少および骨折リスク上昇との関連を示す報告が複数ある.

key words
osteoporosis,bone metabolism,lipid metabolism,atherosclerosis,metabolic syndrome

はじめに

 高LDLコレステロール(Cholesterol: C)血症,高中性脂肪(Triglyceride:TG)血症に代表される脂質異常症は,高血圧症,糖尿病と並んで有病率の高い生活習慣病の一つである.一方,骨粗鬆症も高齢者に高頻度に認められる病態であり,現在わが国で進行している高齢社会においては,この両者の予防と治療は不可欠である.本稿では脂質代謝と骨代謝の接点を示すこれまでの基礎的および臨床的研究を紹介し,脂質異常症およびそれと関連する動脈硬化やメタボリックシンドロームにおける骨代謝の病態について考察する.

分子レベルにおける脂質代謝と骨代謝

 高LDL-C血症は心筋梗塞,狭心症などの心血管イベントの代表的なリスクファクターである.Parhamiらは, LDL酸化物質がマウス間質細胞に働き,骨芽細胞への分化を抑制する一方,前脂肪細胞の脂肪細胞への分化を促進することを報告した1).この結果より, LDL酸化物質は骨において骨芽細胞による骨形成を抑制し,加えて骨格の脂肪髄化を促進することにより,骨粗鬆症を発症させる可能性が示唆される.
 Wntシグナル経路はその活性化により骨芽細胞分化を促進し,骨量増加に働くことが知られている.FrizzledとともにWntシグナル経路の共働受容体であるLRP5(Low-density lipoprotein receptor-related protein 5)遺伝子ノックアウトマウスでは,骨量減少が認められると同時に2),高脂肪食で飼育すると肝でのカイロミクロンレムナントのクリアランスの低下により高C血症を発症する3).臨床的には,LRP6遺伝子に不活性型変異(R611C)を有する家系の研究がなされている.この変異のヘテロ接合体の患者では,高血圧,耐糖能障害,中性脂肪およびLDL-C血中濃度の上昇を認め,若年性冠動脈疾患が生じるが,一方,変異をもたない家系に比べて骨密度(BMD)も低くなることが示されている4).したがって, Wntシグナル経路を介した脂質代謝と骨代謝の病態的な関連が臨床的にも示唆される.

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