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わが国における骨代謝研究のあゆみ

骨と癌

米田俊之

THE BONE Vol.20 No.5, 97-103, 2006

骨は癌にとって格好の住み家である. 骨はその基質中に豊富に増殖因子を蓄えており, リモデリングにより常時その増殖因子を骨髄中に放出しているため, 癌細胞が増殖, 生存する上で極めて好都合な環境となっている. さらに骨に定着した癌細胞は, 我々が骨研究においてこれまで学んだほとんどすべての分子細胞生物学的事象を最大限に利用して増大しようとする. 癌の骨転移は, 骨というダイナミックに恒常性が維持されている環境に, 癌細胞という異種の細胞が入り込んだ場合に, 骨がどのように応答するのか, という視点から捉えることができる. このような骨の異常な応答を元通りに回復させることが, 骨転移に対する効果的, かつ選択的な治療に結びつく. 【はじめに】抗癌療法の格段の進歩により原発巣の制御がほぼ可能となった現在, 癌患者を死に至らしめる最大の原因は遠隔臓器への転移である. 癌の転移好発臓器としては, 肺, あるいは肝臓がよく知られているが, 意外に認識されていない癌の転移標的臓器として骨がある. 骨を転移標的臓器とする悪性の固形癌には, 乳癌, 前立腺癌, 肺癌, 甲状腺癌, 腎癌, そして悪性黒色腫などがある1). また, 小児の神経芽細胞腫も高頻度に骨に転移し, 予後不良の大きな原因となっている2).

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