わが国における骨代謝研究のあゆみ
骨芽細胞の分化と骨形成の調節
―Runx2/Cbfa1の発見がもたらしたもの―
THE BONE Vol.20 No.5, 27-31, 2006
Runx2は骨芽細胞分化を規定する, 最初に同定された分子である. Runx2は, Cbfβとヘテロダイマーを形成することによって初めて十分な転写活性化能を獲得する. そして, さまざまな因子がRunx2と相互作用し, その活性を調節している. Runx2は, 多能性未分化間葉系細胞より骨芽細胞への分化を誘導し, 骨芽細胞の後期分化を抑制する. また, Runx2とRunx3は軟骨細胞の後期分化に必須であり, Ihhを誘導することにより軟骨細胞の増殖を促進する. 【はじめに】1997年のRunx2(runt-related transcription factor2)/Cbfa1(core binding factor α1)の発見以来, 骨形成の分子機構の解明が加速されてきた. Runx2はショウジョウバエの体節形成遺伝子の中のペアルール遺伝子の1つであるruntにホモロジーをもつRunxファミリーに属する転写因子である1). Runx2は骨芽細胞分化と軟骨細胞分化の両者に重要な働きをする. これまで多くのRunx2に関する報告がなされてきたが, 骨芽細胞の後期分化および骨基質産生におけるRunx2の機能は, いまだに一定の見解に達していない. 一方, Runx2と相互作用する多くの転写因子あるいは共役因子が提示され, Runx2を正にあるいは負に調節することが示された. しかし, これらの多くの生理的な意義は, 今後の検証を待たなければならない. Runx2に関し, これまでに明らかになった事項と, 現時点での問題点を提示したい.
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