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特集 小児感染症の今

小児のウイルス感染症疫学研究の今

鈴木陽

Pharma Medica Vol.39 No.8, 23-27, 2021

疫学(epidemiology)は因果関係を科学的に証明する学問であり,現代医学の根幹であるevidence-based medicineを形成する上で非常に重要な手法の1つである。とりわけ,新たな事象に遭遇した際,疫学はその成果を大いに発揮し,医学の発展に寄与する。
現時点において,医学における最大の課題は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の克服である。これまでの報告より,COVID-19の臨床および疫学像は明らかになりつつある。一方,COVID-19への切り札とされるワクチンの研究は過去にないスピードで進み,日本国内においても成人領域におけるワクチン接種が始まった。
COVID-19発生当初と異なり,小児にも発症リスクがあることが明らかになり,地域流行が深刻化するつれ,クラスター対応として休園・休校措置などが実施されるまでになった。国内における小児COVID-19感染例の多くが家族など成人からの感染1)であるが,成人領域のワクチンが進むに従い感染連鎖における小児感染事例の役割も変化してくるであろう。2021年5月には米国におけるワクチン接種対象年齢が12歳まで下げられ2),日本においても6月より同様に引き下げられた3)。また,海外では生後6ヵ月から11歳小児を対象とした同ワクチンの臨床試験が実施されていることより,小児領域におけるワクチン接種が加速化している。
COVID-19ワクチン接種が小児へも幅広く適応された場合,日本の医療,公衆衛生,教育環境下での小児におけるワクチン効果を評価することが望ましい。本稿では,小児へのCOVID-19ワクチン接種を臨床現場においてどのように評価をできるかについてまとめた。
「KEY WORDS」新型コロナウイルス感染症,ワクチン効果,疫学研究

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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