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特集 変形性関節症の病態・治療の最新知見

Ⅰ.総論

変形性関節症の疫学とロコモティブシンドロームに与える影響

伊藤宣

Pharma Medica Vol.39 No.6, 9-13, 2021

変形性関節症 (osteoarthritis:OA) といえば,股関節や膝関節をイメージするのが一般的であろう。しかし,OAはヘバーデン結節として手指関節にも頻発することはよく知られている。さらに,各関節の専門家なら,専門とするその関節に一定割合でOAが発症し,治療が必要になることに異論はないであろう。要するに,頻度の差こそあれ,全身のあらゆる関節にOAは発症することになる。しかし,それぞれの関節におけるOAの大きな違いは,それぞれの関節に発症したOAが,どの程度疼痛や症状として患者に認識され,どの程度治療を要し,さらに重要なのは,どの程度全身の症状や運動機能に与える影響が強いかという点と思われる。股関節や膝関節のOAがよく知られている理由として,頻度の高さと合わせて,全身症状,運動機能に与える影響が強いからであることは疑いない。本稿では,OAを発症する代表的な関節である股関節や膝関節に限らず,さまざまな関節のOAの疫学を簡単に紹介し,同時に全身の機能障害として知られるロコモティブシンドロームやフレイルとの関連について,われわれのデータを含めて紹介したい。ただし,OAとの関連が深い変形性脊椎症や骨粗鬆症との関連については,本稿の目的をやや逸脱するため,あえて論じないことをご了承願いたい。
「KEY WORDS」変形性関節症,疫学,ロコモティブシンドローム

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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