遺伝性ATTR(ATTRv)アミロイドーシスは,トランスサイレチン(TTR)遺伝子変異を原因とする常染色体優性遺伝の疾患である。本症では,TTRを前駆蛋白とするアミロイド(ATTRアミロイド)が全身組織に沈着することにより,末梢神経障害,自律神経障害,心筋症・不整脈,硝子体混濁・緑内障,脳アミロイドアンギオパチーなどの臓器障害を呈する。本症に対しては,TTR四量体安定化薬やTTR mRNAを標的とした核酸医薬の有効性が次々と証明され,近年大きな注目を集めている。なお,本症は以前は家族性アミロイドポリニューロパチー(familial amyloid polyneuropathy:FAP)と呼ばれていた疾患であるが,Internal Society of Amyloidosisは,遺伝性ATTRアミロイドーシス(hereditary ATTR amyloidosis,ATTRv amyloidosis)の疾患名を用いることを推奨しており1),本稿ではこれを用いる。